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月刊 経団連  巻頭言 国土強靭化の一層の推進に向けて

井上 和幸 (いのうえ かずゆき) 経団連審議員会副議長/清水建設会長

2025年1月に埼玉県八潮市で道路陥没が発生し、インフラ老朽化対策が社会課題として注目を集めている。大きなインフラ事故のたびに警鐘が鳴らされてきたが、包括的な対策には至っておらず、一方で、高度成長期に整備された道路橋やトンネル、上下水道などが今後急速に老朽化することが懸念されている。加えて、激甚化する自然災害に対応する防災インフラの整備も喫緊の課題となっている。これらは政府の次期社会資本整備重点計画の論点となる見込みであるが、地域住民の安全・安心を守るためにも、官民一体となって迅速に取り組まなければならない。

そのためには、人材と財源の確保、技術開発が課題であり、人材については、人口減少・少子高齢化による担い手不足が重くのしかかっている。社会インフラは人々の生活や経済活動を支える要であるが、その仕事の重要性や魅力が広く社会に伝わってこなかった。健全なインフラ機能を維持するとともに、防災力を高めていくため、その重要性への理解促進と担い手確保が急がれる。

同時に、デジタル技術などの新技術の活用と開発が不可欠である。例えば、インフラの点検にはAIやロボットを使った技術がすでに開発されており、それらの活用を進めるとともに、産学官連携による効率的かつ効果的な技術開発を加速させたい。

また、人的・物的資源が限られる中で膨大な社会資本整備を進めるためには、中長期的な視点での明確なグランドデザインが必要であり、その観点からも、「FUTURE DESIGN 2040」で示された目指すべき国家像や地域経済社会の実現は極めて重要である。災害に強い国土をつくり、人口減少・少子高齢化に対応した地域社会を構築するためには、既存の自治体の枠にとらわれない政策の実行に加え、コンパクトシティ、スマートシティの推進とその広域連携が鍵となる。

わが国の明るい未来づくりのため、レジリエントな社会の実現に向けた着実な対策と、従来の考え方を超えた取り組みが求められる。

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