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Policy(提言・報告書)  産業政策、行革、運輸流通、農業 「転換期における外国人政策のあり方」 ~秩序ある戦略的誘致・受入れ環境整備に向けて~

2025年12月16
一般社団法人 日本経済団体連合会

Ⅰ.はじめに ― 提言を取りまとめる背景

日本に在留する外国人は約396万人(2025年6月末)、外国人労働者数は約230万人(2024年10月末)と、ともに過去最高を更新した。すでに外国人は日本の経済社会を支える一員となっており、在留外国人の増加ペースは一段と加速している。

こうした中、世界各国が成長分野を中心に産業競争力を強化しており、国際的な人材獲得競争は一層激化している。

他方で、一部の外国人による違法行為、ルールからの逸脱に対して国民の不安や不公平感が生じている側面があり、外国人政策をめぐる社会的な関心は一層高まっている。2025年夏に行われた参議院選挙等においても、外国人政策が主要な争点の一つとして取り上げられたが、一部では事実に基づかない議論もみられた。今後は有為な外国人の秩序ある受入れの必要性を示しつつも、社会の分断を招かないよう、エビデンスに基づき制度の適正化と中長期的な社会統合を進めることが課題であり、日本の外国人政策は大きな転換期を迎えている。

政府は、2024年6月に出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」)等を改正し、現行の技能実習制度を発展的に解消する育成就労制度を創設した。これにより、育成就労から特定技能への道筋が一層明確化され、中長期にわたり日本で活躍する外国人の増加が見込まれる。また、今後5年間の出入国在留管理の基本的な方針を示す「出入国在留管理基本計画」の新たな策定や、本年11月に改組された「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」において、外国人政策に関する基本的な考え方や取り組みの方向性を議論することとしている。

本提言は、こうした状況や政府の動きを踏まえ、わが国の産業競争力の強化や中長期的な社会統合の実現を図る観点から、次期出入国在留管理基本計画のターゲットとなる2030年頃を見据えた外国人政策#1の在り方を提示する。

Ⅱ.基本的考え方

1.中長期ビジョン ― あるべき社会像

経団連の中長期ビジョン「FUTURE DESIGN 2040」(2024年12月公表)では、日本社会の目指すべき姿の一つとして、世界各国から優れた才能や技能・新しい価値観を持った人材が集まり、活躍することで、イノベーションと社会課題の解決が加速し、産業競争力の強化と持続的な成長につながることを示した。

国際的な人材獲得競争が一層激化している中において、こうしたあるべき社会像の実現に向けた施策を講じ、成長と分配の好循環を実現し、有為な人材から「選ばれる国」となることを目指すべきである。

2.ビジョン実現に向けた3原則の順守

上記のビジョンを実現するためには、政府はじめ関係各所が様々な政策・取り組みを検討・展開するうえで、以下の3原則を順守することが重要となる#2(図表1)。

一つ目は、「受入」から「戦略的誘致」への発想の転換である。外国人の受入れは、日本のあるべき社会像を見据え、求める人材のターゲットを明確に定め、地域の受入れ環境を踏まえ、質と人数の両面で十分にコントロールされた秩序あるものとしなければならない。

二つ目は、包摂社会の実現である。民主主義や自由主義、日本の文化・慣習等を含め、日本社会の基本的な価値観を共有した上で、多様な考え方を互いに尊重し合う包摂的な環境を整備することで、社会の分断を生まないための基盤を構築していく必要がある。

三つ目は、ライフコース全体を考えた政策形成である。近年、中長期で日本に在留する外国人は増加傾向にある。こうした中で、外国人も日本人と同様に、就学、就職、結婚・出産・子育て、親族の介護、退職等を経て、余生を過ごすライフコースを日本で歩むこととなる。今後は定住する在留外国人の増加も視野に入れ、外国人個人のライフコース全体を俯瞰した、「面的」な政策を検討・立案・実施する必要がある。

【図表1:ビジョン実現に向けた外国人政策の3原則】

3.ビジョン実現に向けた視点

近年の外国人政策をめぐる状況を踏まえれば、上記の3原則に加えて、次の視点についても考慮していく必要がある。

① エビデンスに基づいた透明性の高い政策形成

外国人の受入れは個々人によって考えが大きく異なる傾向にあり、政策形成にあたっては、エビデンスに基づいた客観的な説明が求められる。根拠となるデータの公表やプロセスの可視化、政策の事後検証を行い、PDCAを適切に回すことで、政策に対する納得性を高めていくことが不可欠である#3

② 政策の国際的なベンチマーキング

国際的な人材獲得競争は一層激化している。実際、マンパワーグループの調査によれば、日本の雇用主の約4人に3人(77%)が「必要なスキルを持つ人材の確保が困難」と回答しており、各国においても同様に人手不足の課題に直面している(図表2)。

こうした中にあっては、日本が他国と比較しても魅力的な国となり、有為な人材を戦略的に誘致できる環境の整備が必要である。そのためには、競合国における外国人政策の推進体制や在留資格、税制、社会統合政策等をベンチマーキングしつつ、日本社会に適した政策を立案していくことが求められる。

【図表2:人材不足に関する調査】

(出所)マンパワーグループ「2025年人材不足に関する調査」より経団連事務局作成

③ 国民理解の醸成

外国人の適切な受入れや実態把握、受入れ後の環境整備等を通じて、国民の安心や納得感を高め、国民理解を醸成していくことが欠かせない。

多くの外国人労働者が日本の経済社会を支えている一方で、一部で日常生活におけるトラブルや、観光客を含めルールやマナーを守らない外国人に関する報道がなされており、外国人の受入れに対する国民の不安や不公平感が高まる要因となっている。こうした状況を踏まえ、政府は、2025年5月に「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」#4を策定・実行している。

まずは、受入れの適正化を徹底し、違法行為等については迅速かつ着実に対処していくことが不可欠である。その上で、社会の分断や排他的な風潮を生まないよう、様々な機会を通じて国民理解の醸成に向けた広報を積極的に行うことが重要である。

Ⅲ.受入れ環境の整備(制度横断的な施策)

OECD諸国における外国人住民の比率の平均は10%を超えている#5なか、日本の総人口に占める在留外国人の割合は約3%にとどまる(図表3)。他方で、在留外国人の増加ペースは、国立社会保障・人口問題研究所#6の推計では年間16.5万人の増加(2022年~2025年)としていたものの、2022年以降の実績値は年間30万人を超えている。加えて、一部の基礎自治体では、すでに外国人比率が10%を超える地域もみられる(図表4)。

これまで外国人は一時的な受入れであるという政府方針の下で受入れを行ってきたが、永住者や中長期的に日本で活躍する外国人は着実に増加している。こうした中、長期で在留する外国人の増加も視野に入れた施策を検討していく必要がある。その際は、各地域の実情を踏まえ、適切な外国人の受入れ環境を早急に整備していくことが求められる。

【図表3:OECD諸国における外国人住民の比率】

(出所)「OECD International Migration Database, Eurostat, UNDESA.」より経団連事務局作成

【図表4:外国人住民比率が10%を超える基礎自治体】

(出所)総務省「令和7年1月1日住民基本台帳人口・世帯数、令和6年(1月1日から同年12月31日まで)人口動態(市区町村別)(総計)」より経団連事務局作成

1.基本理念の制定と政府の推進体制の構築

あるべき社会像の実現に向けて、まず必要となるのは、外国人政策に関する基本理念・基本法の制定である。日本では、入管法や出入国在留管理に関する基本計画、共生社会のビジョンやその実現に向けた中長期的な施策等を示す「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」、社会統合等に向けた短期的な施策である「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」、「外国人雇用管理指針」等は存在している。他方で、これらに通底する基本理念や基本法は未だ不在である。

政府は、外国人の受入環境整備に関する企画・立案と総合調整を行うことを目的として2019年に出入国在留管理庁を設置した。さらに、2025年7月には、外国人施策の司令塔となる事務局組織として、「外国人との秩序ある共生社会推進室」を内閣官房に設置、11月には外国人政策に関する関係閣僚会議を改組し#7、出入国在留管理の一層の適正化、外国人の社会保険料等の未納付防止、外国人による土地等の取得を含む国土の適切な利用・管理等への対応に省庁横断的に取り組むこととしている。現下の状況を踏まえた対応の強化を図る観点から、こうした動きは一定の評価ができる。

他方で、現在の外国人政策にかかる統治機構については、真に実効性があり、政治の強いリーダーシップが発揮できる体制が求められる。現状においては、法務省設置法のなかで法務省(出入国在留管理庁)が外国人の受入れ環境整備に関する総合調整機能を果たすこととされている。あるべき体制として、たとえば、外国人政策に関連する様々な法制度・施策に通底する基礎的な理念を示す基本法のなかで、外国人政策に関する本部(本部長:内閣総理大臣)を位置づけ、内閣府特命担当大臣と常設の専門部署が各省庁との調整や施策の取りまとめを行う(図表5)。その上で、国がライフコース全体をみすえた外国人政策の明確なビジョンを示し、そこからバックキャストして、出入国・在留管理、雇用、教育、社会統合等の政策を省庁横断的に推進していく姿が考えられる。その際、外国人政策に関する各省庁の施策や補助金等を一覧化したポータルサイトを政府のホームページに設けるべきである。

【図表5:外国人政策の推進体制(イメージ)】

(出所)首相官邸「外国人の受入れ環境の整備に関する業務の基本方針について」等より経団連事務局作成

2.中長期的な社会統合

近年、日本に在留する外国人の在留資格や国籍は多様化している。たとえば、10年前と比較すると、国籍・地域別では、ベトナムやネパール、インドネシアといった国々の増加が顕著となっており、在留資格別では、「技術・人文知識・国際業務」「技能実習」「留学」「特定技能」のほか、「家族滞在」がとくに増加している(図表6)。こうした状況を踏まえれば、異なるバックグラウンドを考慮しつつ、ライフコース全般を見据えてシームレスな社会統合施策を推進していく必要がある。

【図表6:在留外国人の構成比の変化】
① 国籍・地域別

② 在留資格別

(出所)出入国在留管理庁「在留外国人統計」より経団連事務局作成

他方、社会統合施策の取り組み状況には基礎自治体間で差が生じている。総務省の多文化共生の推進に係る指針・計画の策定状況等に関する調査では、基礎自治体の外国人住民の割合が高くなるほど、多文化共生推進に係る指針・計画等の策定率が高い。一方で、同程度の外国人人口割合の基礎自治体間でも、多文化共生施策の取組状況には差がある状況となっている(図表7)#8

以下に掲げる社会統合に向けた施策について、国がリーダーシップを発揮し、地方自治体#9への必要な支援を講じていく必要がある。その上で、国・地方自治体・企業・NPO/NGO等の地域に根差した支援団体等、多様なステークホルダーの役割分担を明確化すべきである。併せて、受入れ環境の整備状況や日本の魅力とともに社会規範等への認知度を高める戦略的な広報の展開が求められる。

【図表7:外国人人口割合別の基礎自治体の多文化共生推進施策68項目への取組数(平均実施取組数)】

(注)68項目に及ぶ多文化共生の推進に係る取組について、それぞれ実施の有無を調査し、基礎自治体の外国人人口割合別に平均値、最高値、最低値を集計したもの。たとえば、外国人人口割合が5%以上の基礎自治体では、取組数の平均は28.5、最も多い自治体では60の取組を実施している一方、取組数が0の自治体もあることを示している。
(出所)総務省「令和6年度地域における多文化共生推進状況等調査について」より経団連事務局作成

(1)生活環境の整備

行政手続や日常生活に関する情報に円滑にアクセスできる環境の整備は、外国人が日本で安心して生活するための基盤となる。とりわけ、言語の壁による情報格差の解消が重要である。

出入国在留管理庁の「令和6年度在留外国人に対する基礎調査」では、公的機関が発信する情報を入手する際の困りごととして、「多言語での情報発信が少ない」(17.0%)、「やさしい日本語での情報発信が少ない」(9.1%)との回答割合は前回調査より改善しているものの、依然として上位にある。

まずは、英語を母語としない外国人が理解しやすく、コミュニケーションの手段として有効な「やさしい日本語」の積極的な普及が必要である。出入国在留管理庁が提供する研修教材や動画、「やさしい日本語書き換えツール」等を活用し、「やさしい日本語」の標準化を進める必要がある。併せて、職員向けの研修や、企業や日本人の「やさしい日本語」への理解を深めていくべきである。

その上で、在留手続、雇用、医療・福祉、出産・子育て、子どもの教育、災害対応等の行政サービスの多言語対応を優先度の高い項目から推進し、迅速かつ効率的で質の高い情報発信ができる体制を整備すべきである。

さらに、行政サービスの多言語対応の観点からは、「やさしい日本語」に加えて、「やさしい英語」の普及・促進にも努めていくべきである。

なお、これらの取り組みの推進にあたっては、AI等のデジタル技術も最大限活用し、国や地方自治体職員の負担を軽減することが求められる。

(2)ライフコースに沿った日本語教育・学習支援、文化・社会理解の推進

日本語能力は、在留資格の種類を問わず、外国人が日本社会の一員として自立・共生していくための基盤となる。行政手続や医療、教育、職場、地域コミュニティ等のあらゆる場面で日本語による意思疎通が求められることを踏まえれば、外国人の日本語能力の習得支援は、単なる言語学習にとどまらず、社会統合の中核をなす施策として位置づけられる。

他方で、シチュエーションごとに必要な日本語能力は異なる。政府は、日本語教育の質を確保する観点から、2023年5月に「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」(以降、「日本語教育機関認定法」)を成立させ、2024年4月より、認定日本語教育機関や登録日本語教員の制度を開始した。

日本語学習は4種類に大別できる。まず、認定日本語教育機関は、「留学」「就労」「生活」の3つの課程分野に分かれている。これらに加えて、帯同家族の子ども等を想定した初等中等教育における「学習のための日本語」がある。それぞれの分類によって、教育・学習支援の担い手や求められる日本語能力・水準、教育・学習支援方法は異なるため、分類ごとに施策を検討する必要がある。

① 日本語教育の環境整備

2024年4月より、日本語教育機関認定法が施行されたものの、現状において認定日本語教育機関と登録日本語教員の認定数は限定的である#10。まずは、「留学」「就労」「生活」それぞれの認定数の拡大に向けて、政府は認定日本語教育機関や登録日本語教員の増加、事前相談等による日本語教育機関への申請支援、日本語教員の待遇向上等を図ることが求められる#11

また、各地域のニーズに対応した日本語教育も求められる。政府は認定日本語教育機関と企業、地方自治体、大学・専門学校等が連携し、外国人を雇用する企業等からのニーズに応じて日本語教育を提供する事業(認定日本語教育機関活用促進事業)を実施している。まずは、こうした事業を通じて、各地域のニーズに沿った日本語教育を提供するモデルの確立が求められる。その際、オンライン教材等デジタル技術を活用した日本語学習支援を行う仕組みを組み込み、日本語教育機会の地域間格差を是正していくべきである。

併せて、来日前の早い段階で「日本」に関心を持ってもらい、日本語や文化を学ぶ機会を提供することが肝要である。国際交流基金の調査(2024年度)#12によれば、143の国・地域で日本語教育の実施が確認されており、海外における日本語教育機関数、教師数、学習者数はともに過去最多を更新した(図表8)。日本語学習の目的・理由をみると、前回調査(2021年度)に比べて、アニメや漫画等のコンテンツへの興味が引き続きトップとなっているほか、日本への留学や将来の就職のポイントが上昇している(図表9)。こうした傾向も踏まえつつ、国は受入れのターゲットとなる国・地域において、日本語教育や学習機会の提供に必要な体制を整備していくべきである。

【図表8:海外における日本語教育機関数・教師数・学習者数の推移】

(出所)国際交流基金「海外日本語教育機関調査」より経団連事務局作成

【図表9:日本語学習の目的・理由】

(出所)国際交流基金「海外日本語教育機関調査」より経団連事務局作成

② 初等中等教育段階における日本語教育

文科省の調査(2023年度)では、全国の公立学校において、日本語指導が必要な児童生徒は約7万人であり、過去10年間で約2倍となっている#13。多くの地域での日本語教育・学習支援の現状はボランティア等に委ねられており、予算・人員の持続可能性、教育・学習支援の質の担保に課題が残る。

また、同調査では、日本語指導が必要な児童・生徒の進路をたどると、高校等へ進学できたとしても、中途退学率は8.5%と、日本人を含む全生徒(1.1%)の7.7倍となっている。さらに、卒業後の非正規雇用率は38.6%と、日本人を含む全生徒(3.1%)の12.5倍となり、「学習のための日本語」の支援の遅れが格差の固定化につながっている側面がみられる。

初等中等教育段階における日本語教育の支援体制が確立されれば、日本人および日本語習得の進んだ外国人児童・生徒への指導や支援にリソースを割くことができ、教育全体の質の向上に資する。一方で、支援体制の構築が不十分となれば、経済的に自立できない若者が増加し、行政コストが増大する要因となる。初等中等教育段階における日本語教育の受け皿を早急に整備するとともに、地域の関係団体や企業等が必要な支援を行うことが求められる。

こうした中、日本語教育の形態の一つとして、通常授業とは別で一時的に児童生徒に対して日本語学習を行う「取り出し指導」が存在する。他方で、現行制度上、「特別の教育課程」として取り出し指導を実施する場合、主たる指導者は、常勤・非常勤を含む教員(教員免許状保有者)でなければならず、教員の負担は大きくなっている#14。実際に、文科省の調査#15では、日本語指導に関する特段の体制整備を行っていないと回答した地方自治体は814あり、このうち、「指導できる人員が不足している」との回答は193(23.7%)、「予算が不足している」との回答は112(13.8%)あった。日本語教育の現場において真に求められていることは、形式的な免許の有無ではなく、児童生徒に対して日本語を効果的に教えられるスキルである。

そこで、民間人材等に対し、特別免許状を積極的かつ速やかに与えて教員化することや、主たる指導者を必ずしも教員に限定しない柔軟な運用を検討すべきである#16

さらに、これまでは、在留外国人は一時的な受入れであり、帯同家族を含め中長期的な在留を前提としてこなかった。そのため、学校教育の義務化に関する本格的な検討は進んでいない。他方で、長期滞在者が増加しているなか、中長期での在留を前提とした学齢相当の外国籍の子どもは増加しており、不就学の子どもも多く存在している#17。中長期的には、全ての子どもが義務教育を受けられるよう、外国籍の子どもの教育のあり方について、国や地方自治体の支援体制の強化の観点から、法的な措置も含めて検討する時期に来ている#18

併せて、初等中等教育段階においては、外国籍・日本人児童生徒双方に対する異文化理解教育を推進し、共生社会の基盤を形成していくべきである。

③ 日本語能力を測る試験の改善

日本語能力を測る試験制度の改善も急がれる。現状、20種類以上の日本語能力評価・試験が存在しているものの、「読む」「聞く」「書く」「話す」といった能力を総合的に測定する試験は限定的である。とりわけ、受験者数が最も多く、広く認知されている日本語能力試験(JLPT)は、「書く」「話す」能力を測定していないことに加えて、試験回数は年2回のみとなっている。

国は、「日本語教育の参照枠」#19に基づき、日本語レベルの見える化を推進することで、国内外で共通に評価される試験・評価体系を確立することが求められる。その上で、総合的な能力を測ることが可能な試験の構築や受験機会の拡大に向けて、必要な支援措置を講じるべきである。たとえば、日本語能力試験(JLPT)について、受験機会の拡大や申込受付期間の延長#20、測定する能力の見直しを検討するよう国が働きかけるべきである#21

④ 文化・社会理解の推進

入国前後の生活オリエンテーションの充実、強化も不可欠であり、とりわけ中長期の在留者が増加する中で重要性は高まっている。政府は、外国人が日本の社会制度、生活ルール、マナー等を入国前から学ぶことができるよう、生活・就労ガイドブックや生活オリエンテーション動画(2024年3月配信開始)等を多言語で提供している。引き続き、入国時において、これらのコンテンツの利活用を促すよう、必要な周知を徹底すべきである#22

他方で、これらのコンテンツの利活用状況や理解度を測る仕組みはなく、情報提供にとどまっている。中長期的には、在留資格取得時や更新時の要件として、オリエンテーション動画の視聴等やその理解度を帯同家族含めて測ることを確認する仕組みを設けることを検討すべきである。

また、地方自治体によっては、オリエンテーション動画等を独自に作成している。一方で、社会保険制度や交通ルール等、全国で共通する基本的な項目は、国の提供しているコンテンツと重複しているケースもみられる。全国共通の項目については、国のコンテンツを活用し、各地方自治体は、地域の実情を踏まえて必要な項目を追加できる設計とすることで、地方自治体の負担軽減を図っていくことが求められる。

(3)ライフコース全般を見据えた政策形成、相談体制の拡充

有為な外国人が日本で中長期的に活躍できる環境を整備していくためには、関係省庁、地方自治体、関係団体、企業等が一体となり、切れ目のない支援体制を構築することが不可欠である。

政府は、関係機関の支援体制を一元化するため、2020年7月に「外国人在留支援センター(FRESC)」を設置した。FRESCにおける相談件数は年々増加し、2024年7月までの累計で51万件を超える等、一定の成果を挙げている。一方で、2024年度の出入国在留管理庁の調査#23によれば、9割弱の外国人がFRESCの存在を知らないと回答しており、利用者は依然として限定的である。

今後は、FRESCの機能をより多くの外国人が活用でき、相談体制の地域間格差を解消していくことが求められる。国は、デジタル活用による利便性の向上とともに、地方出入国在留管理官署等の拠点をベースにFRESC機能の地方部への展開ができるよう、必要な財政的支援措置を講じるべきである#24

また、国は地方自治体に対し、外国人受入環境整備交付金により、情報提供・相談を多言語で行う一元的相談窓口の設置・運営を支援している。他方で、基礎自治体における交付限度額は外国人住民数が5,000人以上(1,000万円)で頭打ちとなっている。住民基本台帳#25によれば、すでに外国人住民数が5,000人を超える基礎自治体は約150、1万人を超える基礎自治体は約70存在している(図表10)。在留外国人が急速に増加しているなかにおいては、外国人住民数の多い地方自治体における交付限度額の引上げ等を検討すべきである。

【図表10:外国人住民数が5,000人を超える基礎自治体】

(出所)総務省「令和7年1月1日住民基本台帳人口・世帯数、令和6年(1月1日から同年12月31日まで)人口動態(市区町村別)(総計)」より経団連事務局作成

(4)国によるKPIの設定と地方自治体の好事例の横展開

社会統合施策を効果的に推進していくためには、国が交付金や補助金等#26による支援措置を地方自治体に対して適切に講じていくことが不可欠である。その上で、住民に最も身近な行政主体である基礎自治体の施策については、国が成果指標に基づく統一的なKPIを設定し、PDCAを回しながら取組状況を定量的に把握、可視化していくことが重要である。

また、国は基礎自治体ごとの取り組み状況を比較できる形で見える化し、KPIの達成状況に応じて交付金を増額する等のインセンティブ措置を図ることを検討すべきである。優良な取り組み事例については、地域の実情を踏まえて横展開していくことが期待される。なお、外国人住民数が多いものの、社会統合施策のリソースが不足する規模の小さな基礎自治体については、広域自治体である都道府県が補完的な役割を果たすことを明確化することで、地域間格差の是正を図るべきである。

KPIの具体的な項目としては、総務省の「地域における多文化共生推進プラン」#27で示されている具体的な施策#28が参考となり、相談窓口における解決・伴走支援に至った割合、日本語教育の水準や文化・慣習への理解増進を含む生活オリエンテーションの受講率・修了率、不就学の把握率・解消率、社会保険料納付、防災訓練の参加率等を質的に測っていくことが考えられる。

また、総務省では、「地域における多文化共生推進プラン」に基づき、2024年度に各地方自治体の取り組み状況を網羅的に調査した。こうした実態調査等の改善を図りながら、各地域の社会統合に向けた取り組みを定点観測し、エビデンスを把握していくことが求められる。

(5)永住許可要件の見直し

2025年6月末時点で、永住者は93.2万人となり、在留資格のなかで最も多い区分(全体の23.6%)となっている。2024年6月の入管法改正では、永住許可制度の適正化を図り、永住許可後に要件を満たさなくなった場合等において、永住許可の取消を行うことが可能となった。

日本の永住許可に必要な在留期間は原則10年である#29が、取消事由の追加による制度の厳格性向上とあわせて、永住許可取得までの在留期間の要件については、国際的な動向も鑑みつつ、人材獲得競争の相手国となる諸外国との競争環境のイコールフッティングの観点を含めて適宜検討すべきである#30

また、制度の適正化にあたっては、中長期的な社会統合の観点を考慮することが欠かせない。今後は新たな育成就労制度から特定技能2号への移行までを見据えた外国人が増加していくことが見込まれる。中長期での在留が見込まれる「特定技能2号」や「定住者」、その帯同家族の在留資格が、永住許可を取得する場合には、日本語能力や日本社会・文化への理解度を測る仕組みを要件化することを検討すべきである。

3.DX等による出入国在留管理の徹底、体制強化

デジタル技術の徹底活用による出入国在留管理の効率化・円滑化は、外国人本人の利便性向上にとどまらず、効率的な審査等による行政コストや企業の負担削減等に寄与する。政府は、すでに在留カードとマイナンバーカードの一体化#31や電子渡航認証システム(JESTA)の早期導入#32を図るなど、出入国在留管理におけるDXを着実に進めている。

他方で、在留資格に関するオンライン申請率のKPI設定は2025年度で30%#33であり、実際のオンライン申請率はこれよりも低い状況であることが伺える。オンライン申請の拡大に向けては、利用者に対してメリットを明確に示すことが重要である。窓口申請に比べて、オンライン申請の審査処理期間を短縮することや手数料を軽減する等、具体的な優遇措置を講じた上で周知徹底を図るべきである。

併せて、AIも活用したデータ連携を行い、リスクベースでのスクリーニングを行うことが求められる。これにより、適切な申請者については、審査の迅速化・自動化、提出書類の削減等を進める一方、悪質・高リスクの申請者については重点審査を徹底するメリハリのある審査体制が確立でき、入管職員の負担軽減にも資する。

さらに、将来的には、搭乗手続から検疫・税関・出入国審査に至るプロセス全体の自動化・省人化が期待される。そのためには、民間航空事業者とのデータ連携も進めていく必要がある。

併せて、JESTA利用時や在留諸申請に係る手数料収入については、入管職員の事務効率化や処遇改善、職場環境の改善等、出入国在留管理体制の強化に重点的に活用することで、審査処理期間の短期化や出入国在留管理業務の質の向上を実現していくべきである。

4.実態調査によるエビデンスの把握

在留資格制度の適正な運用は、日本の出入国在留管理行政の信頼性を確保し、有為な人材が活躍できる環境の整備や国民理解を醸成する上で不可欠である。政府は、「経営・管理」や「技術・人文知識・国際業務」など一部の在留資格において、本来の趣旨とは異なる形で在留資格を取得している事例が見られると指摘している。

こうした不適切な運用を迅速に是正することは、在留管理の適正化の観点から必要である。一方で、制度の本来の趣旨に沿って活躍する外国人や、適正に受入れている企業が不利益を被ることは避ける必要がある。

国は実態調査を通じてエビデンスを的確に把握した上で丁寧かつ迅速な政策形成を行うことが求められる。とりわけ、現行の在留資格の要件で不適切な事案が確認できた場合、罰則の強化や在留資格の取消し等の厳正な措置を講じることで、制度の公平性を確保すべきである。その上で、在留資格の要件が昨今の経済社会の変化を十分に反映できていなければ、真に必要な要件等に限って見直すことを検討すべきである。こうした対応により、在留資格制度への信頼を高め、質を十分に担保した受入れ環境を整備していくことが求められる。

Ⅳ.有為な外国人に選ばれるための制度整備(各在留資格における施策)

JICAの試算によれば、政府の目標GDP到達のためには、現行の受入れ方式において、2030年で約77万人、2040年で約97万人の外国人労働者が不足すると見込まれている(図表11)。

国際的な人材獲得競争が激化するなか、わが国の産業競争力を強化していくためには、日本が有為な人材から「選ばれる国」となる必要がある。内外の多様な人材の活躍を推進する中で、外国人材を戦略的に誘致していくことができるかが、日本の成長力や社会の活力を大きく左右する。

多様性をイノベーションにつなげる高度人材の獲得、地方部を含め深刻化する労働力不足を解消する現場人材の受入れ、そして将来の有為な人材となりうる優秀な留学生の誘致・定着など、在留資格や直面する課題ごとに必要な施策は異なる。

【図表11:2040年の外国人労働者の需要】

(出所)JICA緒方貞子平和開発研究所「2030/40年の外国人との共生社会の実現に向けた調査研究:将来の外国人の受入れに関するシミュレーション(需給推計2024年更新版)」より経団連事務局作成

1.高度人材#34

日本では、1999年8月に閣議決定された「第9次雇用対策基本計画」において、「専門的・技術的分野の外国人労働者の受入れをより積極的に推進する」方針を掲げて以降、高度外国人材の受入れ拡大に取り組んできた。

この間、高度人材ポイント制やJ-Skip(特別高度人材制度)、J-Find(未来創造人材制度)の創設、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の運用の明確化等が進み、高度外国人材の受入れは着実に拡大している。出入国在留管理庁の在留外国人統計によると、在留資格「技術・人文知識・国際業務」は2013年末#35に115,357人であったが、2024年末時点で約3.6倍の418,706人となっており、高度専門職も28,708人となっている。

一方で、高度人材ポイント制の導入から10年以上が経過し、この間も国際的な人材獲得競争は一層激化している。OECDの「Talent Attractiveness 2023」によれば、日本の魅力度の順位は、高学歴労働者、外国人起業家、スタートアップ創業者にとって、国際比較で低位となっている(図表12)。また、国際比較での賃金水準をみると、日本はG7の中で最下位であり、OECD平均より低いことも魅力度の低下につながっている可能性がある(図表13)。

イノベーションの源泉となる高度外国人材を確保するためには、わが国の産業構造の転換や競争力の強化を支えるデジタル人材やスタートアップ振興に資する人材等、ターゲットを定めて戦略的に誘致を進める必要がある。

【図表12:OECD調査によるグループ別魅力度ランキング】

※7つの側面(機会の質、所得と税、将来の見通し、家族の環境、スキルを巡る環境、包摂性、生活の質)から成り、4つのグループ別に計23-25の変数を設定。高学歴労働者、起業家は38か国中、留学生は37か国中、スタートアップ創業者は24か国中の順位。
(出所)OECD「Talent Attractiveness 2023」より経団連事務局作成

【図表13:主要先進国平均年収】

(出所)OECDデータより経団連事務局作成

(1)時代の変化に対応した在留資格要件の見直し、手続のさらなる円滑化

高度人材を受入れるための在留資格の要件は、経済社会が急速に変化する昨今の状況を踏まえて不断に見直していく必要がある。この対応に遅れることとなれば、真に誘致すべき人材を惹きつけられないだけでなく、制度の抜け穴を衝いた在留資格の不適切な運用を許すリスクが生じる。

2012年の高度人材ポイント制の運用開始以降、ポイント計算にかかる基本項目(学歴・職歴・年収・年齢)の見直し等は行われておらず、最低年収基準は300万円と低い水準(日本の平均年収は478万円#36)のままとなっている。近年の賃金上昇や諸外国の制度をベンチマーキングした最低年収水準の引上げや年収帯の配点の見直し等を検討すべきである。

また、高度人材を積極的に受入れていくという政府方針を踏まえ、高度人材の審査処理にリソースを割くことも必要である。たとえば、ポイント制による出入国在留管理上の優遇措置のある「高度専門職」は、標準処理期間が他の在留資格に比べて認定は10日、更新・変更は5日と短期化されている。しかし、「高度専門職」の実際の審査処理期間は標準処理期間を大きく上回る状況となっている(図表14)。審査の複雑化や長期化を招いている要因の一つには、特別加算項目が積み重なっていることが挙げられる。実効性の低い加算項目と時代の変化に応じて真に誘致すべき分野への加算項目の配点にメリハリをつけるとともに、活用実績の小さい項目について、廃止も含めた検討をすべきである。

【図表14:主な就労資格の審査処理期間の推移】

(注)在留期間更新許可申請及び在留資格変更許可申請に係る日数については、「審査終了までの日数」をさす。赤字は標準処理期間を超過した処分(審査終了)までの日数をさす。
(出所)出入国在留管理庁「在留審査処理期間」より経団連事務局作成

(2)スタートアップ振興

外国人起業家の誘致を含めたスタートアップ支援は、政府の成長戦略#37の一つとして位置づけられており、わが国のイノベーションの創出と社会課題の解決の原動力である。スタートアップ振興に資する起業家を高度人材として積極的に呼び込み、わが国におけるスタートアップの裾野を広げていく必要がある。

政府はこれまで、外国人の起業準備活動を可能とするスタートアップビザの拡充やJ-Find(未来創造人材制度)、ポイント制によらず一定の学歴・職歴・年収で「高度専門職」を付与するJ-Skip(特別高度人材制度)の創設を行ってきた。まずは、これらの制度について、国内外で戦略的な広報を展開していくことが求められる。併せて、スタートアップビザやJ-Find(未来創造人材制度)により「特定活動」を取得した後は、移行先となる在留資格との接続性を特例も含めて高めていくべきである。

(3)多様な家族関係への対応

高度人材の受入れ拡大にあたっては、帯同家族の在留に関わる予見可能性と安定性を確保することが不可欠である。近年、ライフスタイルや結婚観の多様化が進む中、日本の婚姻・家族制度を基にした現行の在留制度は、事実婚や同性婚のケース等に十分に対応できていないといった指摘がある。日本社会の基本的価値観の共有を前提としつつも、多様な価値観、家族形態を包摂し、日本が有為な人材から「選ばれる」要素の一つとしていくことも重要である。

2.留学

留学生は高度外国人材確保の有力な手段である。優秀な留学生の誘致から卒業後の国内での就職や起業、そして定着まで、より面的な施策を展開する必要がある。OECDによるグループ別魅力度調査(Talent Attractiveness 2023)においても、留学生からみた日本の魅力度の順位は国際比較で上位に位置している(図表12参照)。他方で、大学院・大学等の高等教育機関を卒業した外国人留学生の国内就職率は、38.1%(2023年度)#38と、2033年までに60%とする政府目標#39からは乖離している(図表15)。

こうした中、政府はJ-Find(未来創造人材制度)により就職活動や起業準備活動を目的に在留資格「特定活動」を付与し、最長で2年間の在留を可能としている。他方で、対象となる大学は世界大学ランキングに基づいているため、国内の対象大学は東京大学、京都大学のみとなっている。外国人留学生の就職活動支援・定着の観点からは、本制度について、たとえば、国際卓越研究大学等の成績上位者に限って、国内の対象大学を拡大する等の柔軟な措置を検討すべきである。

また、留学生の出身国はアジア地域が9割以上と地域的な偏りがみられる。研究・教育現場・就職先での多様性を確保していくためにも、引き続きより幅広い国・地域からの戦略的誘致を行うことが欠かせない#40

【図表15:在学段階別進路状況】

(出所)独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)「2023(令和5)年度外国人留学生進路状況調査結果」より経団連事務局作成

3.現場人材

日本では、専門的・技術的分野以外の外国人労働者については、「国民のコンセンサスを踏まえつつ、十分慎重に対応」していく方針を示している。他方で、人手不足の深刻化もあいまって、特定技能や技能実習等の在留外国人は急速に増加しており、日本の経済社会の重要な担い手となっている実情がある。

こうした状況も踏まえ、2024年6月の入管法等の改正では、人材育成を通じた国際貢献を目的とする技能実習制度を発展的に解消し、人権保護を適切に図りつつ、人材確保と人材育成を目的とした育成就労制度を新たに創設した。さらに、育成就労制度と特定技能制度の連続性を持たせることで、外国人が就労を通じて技能を段階的に高め、有為な人材が将来的には家族帯同や永住の申請が可能な特定技能2号へと移行できるわかりやすい制度の構築を目指している(図表16)。

2025年3月には、特定技能制度及び育成就労制度の基本方針(以降、「基本方針」)が閣議決定#41され、現在、政府において両制度の詳細な制度設計が行われている#42。国際社会では、ビジネスと人権が一層重視されつつあるなか、今後はこうした政府の改革が実効性あるものとなるよう注視していく必要がある。

【図表16:育成就労制度創設による制度見直しのイメージ】

(出所)出入国在留管理庁、厚生労働省各種資料より経団連事務局作成

(1)特定技能

2019年4月に制度運用を開始した特定技能制度は、生産性向上や国内人材の確保のための取り組みを行ってもなお人材を確保することが困難である産業分野(以下、「特定産業分野」)において、即戦力となる外国人を受入れる仕組みを構築することを目的としている。2025年6月末時点で1号特定技能外国人は33万3,123人、2号は3,073人と、いずれも過去最高を更新している#43

一方で、急速な受入れの拡大に伴い、制度趣旨に沿った運用の適正化、手続の迅速化等の措置を講じていくことが課題である。

① 制度の透明性の確保(受入れ対象分野、受入れ見込数)

特定技能制度と育成就労制度は、分野別運用方針において5年ごとの受入れ見込数を示すこととしている。2019年4月の特定技能制度の開始当初、特定産業分野は12分野、受入れ見込数は345,150人であったが、2024年3月に新たに自動車運送業・鉄道・林業・木材産業の4分野を追加し、受入れ見込数は約2.4倍の820,000人となった。さらに、政府では現在、分野のさらなる追加と受入れ見込数の設定の議論が行われている。

地方部を中心に各産業の人手不足が急速に深刻化するなか、現場人材の受入れ分野と受入れ見込数は、経済社会の変化に応じて柔軟に見直していく必要がある。他方で、見直しにあたっては、制度の透明性を確保し、国民の納得を得ながら検討していく必要がある#44。具体的には、特定技能制度と育成就労制度の分野別運用方針において、生産性向上や国内人材確保のための取り組み、受入れの必要性等を客観的な指標を用いて示すことが求められる。分野別運用方針の検討にあたっては、受入れの必要性や受入れ見込数を分野横断的に議論すべきである。

② 真に生産性向上につながる制度設計

特定技能制度は、継続的な生産性向上等の取り組みを通じて、業界全体が魅力的となるよう自助努力を促すような制度設計とすることが求められる。こうした観点から、特定産業分野ごとの実情に応じた上乗せ基準を設定し、受入れ機関(雇用主)が安易に「安い労働力」として依存できない設計・運用としていくことが不可欠である。

上乗せ基準の検討にあたっては、制度趣旨に鑑み、継続的な生産性向上や人材育成、労働安全衛生の徹底等に資するかどうかを判断していく必要がある。たとえば、DX投資等による生産性向上に業界として取り組む場合、システムの導入のみを上乗せ基準とした場合、それ以降の生産性向上への投資継続を担保しづらい。導入後も継続的な生産性向上に向けた投資を促しうるような基準の検討が求められる。併せて、国は継続的な生産性向上に取り組む業界に対して、必要な支援措置を講じていくべきである。

③ 特定技能2号の適正化と質と人数のコントロールのあり方

外国人の受入れは、あるべき社会像を見据えて、質と人数の両面で十分にコントロールされた秩序あるものとしていく必要がある。育成就労制度と特定技能制度では、人数は受入れ見込数でコントロールし、質は技能試験や日本語能力試験等で担保を図っている。

他方で、とりわけ特定技能2号評価試験の合格率は、低い分野で約1割、高い分野で約9割と、分野間で大きな乖離がみられる(図表17)。特定技能2号への移行者は年々増加しており、将来的な永住申請も可能な在留資格である。受入れる外国人の質を十分に担保する観点から、分野横断的に技能の質を明確化し、評価の公平性・透明性を高めていくべきである。その際は、国家検定制度として確立されている技能検定の合格を移行の要件とする特定産業分野を参考に、基準の適正化を図っていくべきである。

【図表17:特定技能制度の技能試験の合格率】

(注1) 受験者数・合格者数には、2025年6月末までに実施し、令和2025年7月末までに結果が公表された技能試験及び日本語試験を計上(2025年7月末時点で速報値を更新)。
(注2)特定技能1号外国人の「第37回介護福祉士国家試験」の合格率は33.3%(受験者数4,932人、合格者数1,643人)。
(出所)出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況(令和7年6月末)」、厚生労働省「介護福祉士国家試験の受験者・合格者・合格率の推移」より経団連事務局作成

なお、政府は、育成就労と特定技能以外の在留資格においても、一定の受入れ上限数の設定を検討する可能性もあることを示唆している#45。質と人数の両面で十分にコントロールする必要があるとの観点からは、こうした議論を深めていくこと自体は意義がある。

他方で、国際的な人材獲得競争が激化しているなかで、「経営・管理」や「技術・人文知識・国際業務」を含め、適切な形での在留資格の確認と運用を前提にすれば、こうした高度人材が受入れられなくなるほど来日することは想定し難い。

まずは、適切な在留資格の運用を徹底し、とりわけ、現場人材については、技能や日本語能力等を適切に測る制度設計により質の担保を図ることが課題である。

(2)育成就労
① 優良な受入れ機関へのインセンティブ設計

育成就労制度を真に人権保護を図りつつ、外国人の技能向上や定着を促進していく仕組みとするためには、悪質な受入れ機関を淘汰し、優良な受入れ機関のみが残る制度設計を行う必要がある。

優良な受入れ機関については、受入れ可能人数の拡大や各種申請書の簡素化、届出の頻度軽減等のインセンティブを付与し、受入れ機関の自助努力を促していくべきである。優良認定となる基準については、単に技能の修得実績だけを考慮するのではなく、外国人の待遇や相談・支援体制、日本語能力の到達度、人権保護の取り組み、労働安全衛生の実効性等を測る項目を設けることが望ましい。また、優良認定の基準は定期的に見直し、制度全体の質の向上につなげるべきである。

② サプライチェーン上のビジネスと人権の推進、送出機関・監理支援機関の適正化

経済のグローバル化に伴い、国境を越えた企業活動が拡大し、企業活動が人権に及ぼす影響が広く認識されている。また、世界的に影響力を持つ企業がサプライチェーン上の人権保護を取引条件とするなど、ESG投資を含め、企業の人権に対する企業の責任をめぐる国際的な動きは活発化している。制度等の見直しにあたっては、諸外国から見せかけの改革と捉えられないよう、国際社会の評価も踏まえながら慎重に進める必要がある。

育成就労制度においては、外国人の人権を一層保護する観点から、本人意向の転籍を認めた。また、現行の技能実習よりも幅広く体系的な能力を習得できるよう、業務区分を広く設定した。

こうした中、同一の業務区分内であっても、経済社会の変化に伴い、求められる技能が変化する場合がある。実際、政府においても、デジタル化の進展等に伴い、同一の業務区分内でも技能が明らかに異なる等の理由から、業務区分を切り分ける検討が行われている。他方で、業務区分を切り分ければ、これまでの業務区分よりも転籍範囲が狭くなるため、人権保護の観点からは慎重な検討が必要である。

まずは、切り分けを行う業務区分において、必要な技能が異なることを示し、転籍制限を目的とした切り分けでないことを明らかにすべきである。併せて、現状においても、切り分け後の業務区分間での転籍がほとんど行われていないかも確認する必要がある。

仮に転籍制限を目的とする切り分けと判断された業務区分については、受入れ機関の自助努力で労働環境・待遇を改善し、魅力的な業界となるためのインセンティブ設計を行うことが求められる。

また、育成就労制度においては、送出機関や監理支援機関の適正化が制度の信頼性の要となる。国は、主要な送出国とのMOCを早期に締結していくことが求められる。

加えて、送出費用や送出ルートの適正化・透明化も欠かせない。現行制度では、外国人が送出機関に支払う費用を、外国人が日本で受け取る月給の2ヶ月分までと定めている。他方で、職業紹介手数料等を労働者に負担させることは、ILO条約#46に基づき日本では禁止されている。育成就労外国人が職業紹介手数料の負担を容認する制度設計となっている点については、ビジネスと人権の観点から引き続きの見直しが求められる。たとえば、こうした制度設計が、EUの強制労働産品の排除に関する規制として指定されれば、日本産品の輸入制限にもつながり得るといったリスクも考慮する必要がある。

また、外国人が送り出し機関に支払う手数料をゼロとしている優良な受入れ事業者を増やすインセンティブ設計も不可欠である(コラム1参照)。

さらに、業界ごとに人材育成や生産性向上、日本語教育、ネットワークの構築等に資するプラットフォームづくりも欠かせない。国はこうした業界ごとの取り組みを後押しするとともに、必要な支援を講じていくべきである。

コラム1:送出機関・監理支援機関の適正化に向けた民間の取り組み

受入事業者による適正な送出機関の選定を支援するため、公益法人等の民間による取り組みを活用することが期待される。たとえば、国際人材協力機構(JITCO)は多くの送出国政府機関と連携し、各国の送出制度や送出機関の情報の監理団体等への提供や、送出機関と監理団体等とのマッチングセミナーを開催している。こうした取り組みを通じて、優良な送出機関の見える化を図っていくことが重要である。

また、RBA(Responsible Business Alliance)や公正で倫理的なリクルートFERI(JP-MIRAI)等の枠組みを活用して、外国人が送り出し機関に支払う手数料をゼロとしている受入れ事業者については、優良認定を受けやすくすることが考えられる。

③ 育成就労から特定技能への移行の円滑化

育成就労から特定技能への接続性の向上に伴い、制度間を円滑に移行するための体制整備の強化が求められる。今般の入管法等改正に伴い、これまで技能実習生の支援の役割を担ってきた「外国人技能実習機構(OTIT)」は、「外国人育成就労機構」として、育成就労外国人の転籍支援や1号特定技能外国人への相談援助業務も担うこととなる。

制度の実効性を担保するため、外国人育成就労機構等は技能実習制度で培った相談支援業務等のノウハウやネットワークを最大限活用し、転籍や相談支援を迅速に提供できる体制を整備すべきである。国はこうした体制整備に必要な人員配置や連携等に対して必要な支援を行い、機構等の役割を外国人や受入れ機関等に積極的に周知していくことが求められる。

また、監理支援機関が適切な役割を果たすための公益法人の活用を含めた体制整備も重要である。とくに、育成就労制度では、就労開始までに日本語能力A1相当以上の試験合格か、それに相当する日本語講習の受講が義務化される。監理支援機関による日本語講習にあたっては、こうした団体を活用した登録日本語教員の紹介・派遣を行う仕組みの構築も有効である。また、監理支援機関の外部監査を行う体制を質およびリソースの両面で整備する観点から、育成就労の知見を有する公益法人等による外部監査の活用も行うべきである。

併せて、外国人育成就労機構における各種申請・届出のオンライン化や関連業務の電子決裁化を所管省庁と連携しながら着実に進めていくべきである。電子申請システムの導入は、申請者の利便性の向上のほか、重複する書類の提出を軽減等による機構の事務作業の効率化に資する。これにより、不適切事例の監査や書類を保管するためのコストが軽減でき、真に必要な業務にリソースを割くことが可能となる。

また、2027年4月の育成就労制度の開始前から監理支援機関の許可等の事前申請が開始される。こうした移行期間においても、国は機構の人員を含めたリソースの確保やシステムの構築に向けた支援措置を講じるべきである。

Ⅴ.企業の果たすべき役割

中長期的な社会統合を実現していく上で、企業は受入れ主体としてのみならず、地域社会の構成員としての責務を担っている。

企業は受入れている外国人や帯同家族に対して、日本語習得の支援や文化・慣習への理解促進を図るべく、研修機会や地方自治体等のセミナー等に関する情報提供を積極的に行っていく必要がある。また、日本人従業員やその家族に対しても、多文化理解の促進や「やさしい日本語」の習得機会を提供していくことが期待される。その際、一部の地方自治体からは、外国人住民の勤務先と居住場所の地方自治体が異なり、帯同家族を含めて適切な支援のアプローチができていないといった課題が指摘されている。企業もこうした地方自治体の課題も考慮し、受入れている外国人への適切な情報提供を行うことが欠かせない。

また、日本が有為な人材から「選ばれる国」となるためには、企業においても、労働者のエンゲージメント向上に向けた就労環境の改善等が不可欠である。報酬水準の引き上げも含めた処遇体系や休暇等福利厚生制度の見直し、現場における多言語対応等の社内インフラや労働安全衛生環境の整備等が求められる。

加えて、多様な人材が自らのスキルを最大限発揮できるよう、雇用慣行のさらなる見直しも必要である。能力や成果に応じた透明性の高い評価基準の整備や、ジョブディスクリプション・キャリアパスの明確化等も進めていくべきである。

さらに、人材の還流によるネットワークの強化も重要である。人材の掘り起こしを念頭に、帰国後の活躍支援や海外勤務経験者とのOB・OGネットワークを構築し、グローバル市場における日本の存在感を高めていく視点も欠かせない。

経済界としても、行政、NPO/NGO、教育・医療機関、地域コミュニティといった多様なステークホルダーとの連携を強化し、地域全体で帯同家族を含めた外国人を包括的に支えるネットワークの構築を主導できるよう、機運醸成を図っていく#47。これらの取り組みを通じて、受入れる外国人の日本社会への適応を促進することで、産業競争力の強化と中長期的な社会統合を図り、有為な人材から「選ばれる国」となることを目指す。

コラム2:好事例の取り組み

(1)日本語教育の好事例と企業の連携―認定NPO法人プラス・エデュケート

愛知県は、日本語指導が必要な児童生徒数が全国最多であり、他地域に比べて、日本語指導の課題への対応が先進的に求められている。

この課題に向き合うのが、認定NPO法人プラス・エデュケートである。同法人は愛知県豊明市等からの委託事業により、来日直後の日本語指導が必要な児童・生徒を対象に、「日本語初期指導教室」を展開している。これは、通常授業に代わり、独自の教材や指導方法により3か月で日常会話レベルまで話せるようにすることを目指す。また、放課後は外国人が集住する公営住宅内で放課後学習支援教室を展開し、小学生から高校生までの学習を支援している。

こうした活動を支えるのは地域企業や財団による支援である。成長過程にある子ども期に質の高い日本語教育を行い、その後のキャリア形成に対する支援体制を整えることは、地域を支える人材育成に欠かせない。

(2)企業・業界の取り組みの好事例

  1. ①日本語習得支援
    • 社員寮での地域日本語教室の展開(自動車部品)

    • 試験の受験費用や遠方の受験会場までの交通費を補助(水産加工)

    • 独自の日本語検定を作成し、合格すれば賞与を支給する等、技能実習の段階からのインセンティブを設計(自動車部品)

  2. ②生活支援
    • 社内で日本語のほか、文化やマナーを教える機会を設けるほか、病院や役所への付き添い等を支援(自動車部品、介護)

  3. ③社内インフラ・環境改善
    • タブレット端末にマニュアルや写真等を表示しながら、話した言語が多言語で表示されるシステムの導入(生産現場)

  4. ④人事制度の見直し
    • 高度な金融・IT技術を持つ博士課程修了者を対象にしたジョブ型雇用制度を導入。職務や役割、実績、市場評価に応じた報酬体系を採用(金融)

    • 独自の人事考課に基づき賞与を支給するインセンティブの構築(介護)

  5. ⑤業界での取り組み
    • 鉄道技術の基礎知識の習得、特定技能評価試験合格に向けた研修プログラムを提供。業界団体が受入れや研修のコーディネート等を実施(鉄道)

    • サプライチェーン強化に向けて、技能労働者教育・訓練施設を設置し、関連会社で受入れる技能実習生への特別教育を実施(建設)

    • 日本語指導を行うボランティアを企業から募集(経済団体)

  6. ⑥地域との連携
    • 地域イベントの積極的な案内・参加促進(水産加工)

    • 受入れ後、地域に定着できるよう、監理団体を通じた講習や地域文化体験学習等の機会を提供(食品加工、監理団体)

Ⅵ.おわりに ― 残された課題

本提言では、2030年頃を見据えて必要な施策を示した。他方で、今後も人口減少が進むなか、2030年以降も在留外国人は増加の一途を辿ることが見込まれる。今後も息の長い取り組みが必要であり、ライフコース全体を考えた政策形成に向けて、中長期的な課題も多く残されている。

一つは、在留外国人の高齢化への備えである。現役世代のうちから、年金・医療・介護等の社会保障制度への加入、保険料納付を徹底し、制度への適正なアクセスを整備していく必要がある。同時に、医療機関・介護施設等の受け皿の整備も課題となる。

また、子どもの教育環境の整備も喫緊の課題である。外国籍の子どもへの教育や生活支援を現状のボランティアへ依存する構造から脱却しなければ、持続可能な受入れ環境の整備はできない。

これまでの外国人政策は、問題が起きてから対処するという受け身の対応であった側面も否めない。現在直面する課題だけでなく、中長期に想定される課題への対応を先送りすれば、却って行政コストが増大する可能性が高くなる。

今後は、社会の分断を招かないよう、外国人政策に関する基本理念を基に能動的に政策を推進していくことが求められる。そのためには、政治が強いリーダーシップを発揮できる体制の早急な整備が欠かせない。

こうした推進体制の下で、有為な外国人が中長期的に日本で活躍できる環境を国・地方自治体・企業・地域に根差した団体等の多様なステークホルダーが一体となって整備し、成長と分配の好循環の基盤を形成していくことが求められる。

以上

  1. 本提言における外国人政策は、主に社会統合施策や在留資格の適正化に焦点をあてる。
  2. 前回提言「Innovating Migration Policies―2030年に向けた外国人政策のあり方―」(2022年2月)では、①「受入」から「戦略的誘致」へ、②ダイバーシティ&インクルージョン(Ⅾ&I)、③ライフサイクルを通じた支援の3原則を示した。本提言の3原則は、基本的に前回提言を踏襲している。
  3. 英国では、内務省が所管する経済学者が中心で構成されるMigration Advisory Committee(MAC)を設置し、移民制度に関するエビデンスに基づく助言を政府に提供している。
  4. 出入国在留管理庁より、ルールを守らない外国人により国民の安全・安心が脅かされている社会情勢に鑑み、不法滞在者ゼロを目指し、外国人と安心して暮らせる共生社会を実現する「入国管理」、「在留管理・難民審査」、「出国・送還」の3つの段階に分け、各段階における具体的な対応策を示したもの。
  5. OECD「International Migration Outlook 2024」より。2023年におけるOECD諸国全体の平均は11.0%、OECD各国の率でみた単純平均は14.7%。
  6. 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」より。
  7. 2025年11月4日に「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」を「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」に改組。
  8. 総務省「令和6年度地域における多文化共生推進状況等調査について」より。調査期間は2024年8月30日~10月16日、調査対象は全47都道府県及び全1741市区町村(回収率100.0%)。
  9. 本提言において、「地方自治体」は広域自治体(都道府県)と基礎自治体を指す。
  10. 2025年11月1日時点における認定数は、「留学」分野は61校、「就労」分野は3校、「生活」分野は0校。2025年9月19日時点の登録日本語教員は10,143名。
  11. 2029年3月までは、日本語教育機関(法務省告示校)において引き続き日本語教育を実施することが認められる経過措置を設けている。
  12. 国際交流基金「海外日本語教育機関調査」より。
  13. 文科省「日本語指導が必要な児童生徒の受入れ状況等に関する調査(令和5年度)」より。
  14. 教員免許保有者のうち、主に日本語指導を行う日本語指導担当教員が位置づけられている。
  15. 文科省「日本語指導が必要な児童生徒の受入れ状況等に関する調査(令和5年度)」より。
  16. 米国や英国、カナダ、オーストラリア等では、英語を母語としない人に英語を教えるESL(English as a Second Language)を専門とする教員資格が整備されている。こうした例を参考に、日本語を母語としない人に日本語を教えるJSL(Japanese as a Second Language)を専門とする教員免許の枠組みを創設することも考えられる。
  17. 文科省「外国人の子供の就学状況等調査」令和6年度調査結果によると、住民基本台帳上の外国人の子どもは163,358人。このうち、就学者数は150,031人、不就学の可能性があると考えられる数は8,432人。
  18. 日本においては、外国人の子の保護者に対する就学義務は課されておらず、公立の義務教育諸学校へ就学を希望する場合には、国際人権規約等も踏まえ、日本人児童生徒と同様に無償で受入れている。
  19. 「日本語教育の参照枠」とは、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)を参考に、日本語の習得段階に応じて求められる日本語教育の内容・方法を明らかにし、外国人等が適切な日本語教育を継続的に受けられるようにするため、日本語教育に関わる全ての者が参照できる日本語教育、教授、評価のための枠組み(文化庁)。
  20. 2025年の申込受付期間は、第1回試験(7月6日)は3月18日~4月8日まで、第2回試験(12月7日)は8月18日~9月8日までであり、約3か月前が締切。
  21. JLPTの試験回数は年2回であることに対して、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)はコンピューター・ベースト・テスティング(CBT)方式で試験回数を多くしている。他方で、同テストの測定対象は、特定技能1号で求められる日本語教育の参照枠A2レベルのみである。特定技能2号で求められるB1レベルも測定対象に加えることで、日本語能力の判定機会を増やす方法も考えられる。
  22. 「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」では、動画の視聴数をKPIとして掲げており(2026年度までに累計視聴回数150万回)、本年11月6日時点で、約54万回再生されている。
  23. 出入国在留管理庁「令和6年度在留外国人に対する基礎調査」より。
  24. FRESCを参考にした展開事例としては、横浜みなとみらい地区「Y-FORA」と福岡県「FUKUOKA IS OPENセンター」がある。また、各地で合同相談会の開催等も実施しているものの、常設の動きには至っていない。
  25. 総務省「令和7年1月1日住民基本台帳人口・世帯数、令和6年(1月1日から同年12月31日まで)人口動態(市区町村別)(総計)」より。
  26. 具体的には、国は外国人受入環境整備交付金や新しい地方経済・生活環境創生交付金(第2世代交付金)における共生社会推進にかかる事業等が挙げられる。
  27. 総務省では、2006年に、地方自治体における多文化共生の推進に係る指針・計画の策定に資するため、「地域における多文化共生推進プラン」を策定。その後、外国人住民の増加・多国籍化、在留資格「特定技能」の創設、多様性・包摂性のある社会実現の動き、デジタル化の進展、気象災害の激甚等、多文化共生施策を取り巻く社会経済情勢は大きく変化していることを踏まえ、2020年に改訂。
  28. コミュニケーション支援(行政・生活情報の多言語化、日本語教育の推進等)や生活支援(教育機会の確保、災害時の支援体制整備等)等
  29. 現行制度において、外国人が永住許可を取得するためには、原則として引き続き10年以上本邦に在留していることが要件(このうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は・居住資格をもって引き続き5年以上在留している必要)となっている。
  30. すでに「高度専門職」において、70点以上のポイントで高度外国人材として認められた者の永住許可申請に要する在留期間は3年、80点以上のポイントで1年といった特例が設けられている。
  31. 在留カードとマイナンバーカードを一体化した「特定在留カード」を交付し、手続をワンストップ化することにより、我が国に在留する外国人の利便性向上と、行政運営の効率化を図ることとしている。入管法等改正法公布日(2024年6月21日)から起算して2年以内に施行される予定。
  32. 来日を希望する外国人(観光などの短期滞在を目的とした査証免除国・地域の者等を想定)について、渡航前に、入管庁に対して渡航目的や滞在先等の情報を提供させ、事前にチェックを行うシステム。訪日外国人旅行者数を2030年までに6,000万人とする政府目標を踏まえ、急増する訪日外国人旅行者数に対応するため、2028年度中の前倒し導入を目指す。
  33. デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(2025年6月13日)より。
  34. ここでは、「高度専門職」、「技術・人文知識・国際業務」等の在留資格を取得している大学卒のいわゆるホワイトカラー層を主に対象とする。
  35. 「技術」と「人文知識・国際業務」の合計数。
  36. 国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査」における1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与。
  37. 骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針2025)(2025年6月13日閣議決定)において、『「スタートアップ育成5か年計画」に基づく取組を推進する。 アントレプレナーシップ教育の充実、起業家の海外派遣・誘致・育成、海外への発信強化に取り組む』こととしている。
  38. 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)「外国人留学生進路状況調査結果」より。
  39. 内閣府「対日直接投資促進プログラム2025」(2025年6月対日直接投資推進会議決定)より。
  40. 経団連「2040 年を見据えた教育改革~個の主体性を活かし持続可能な未来を築く~」(2025年2月)において、優秀な外国人材の戦略的誘致や外国人留学生の積極採用、大学等の国際化の推進等について提言。
  41. 2025年3月11日に「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針及び育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する基本方針」を閣議決定。
  42. 2024年12月に「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」の下、「特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議」を設置。
  43. 出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況(令和7年6月末)」等より。
  44. 基本方針では、受入れ見込数は、大きな経済情勢の変化が生じない限り、「特定技能1号」ならびに育成就労外国人の受入れの上限として運用することとしており、この設定にあたっては、客観的な指標等に基づいて示さなければならないこととしている。また、「生産性向上のための取組や国内人材の確保を行ってもなお当該分野における人手不足が深刻であり、当該分野の存続・発展のために外国人の受入れが必要であることを有効求人倍率、雇用動向調査その他の公的統計又は業界団体を通じた所属企業への調査等の客観的な指標等により具体的に示す」こととしており、受入れ見込数は、「人手不足の見込数と比較して過大でないことを示さなければならない」としている。
  45. 2025年8月に公表した法務大臣勉強会の「外国人の受入れの基本的な在り方の検討のための論点整理」において、「仮に「特定技能」や「育成就労」の在留資格以外の在留資格の外国人について も 一定の受入れ上限数等を設定する(在留外国人数の極端な増加により社会との摩擦が許容度を超える兆候が見えた場合に時限的に受入れ制限を行うようなサーキットブレイカー的な時限的総量規制等)とした場合に出入国及び在留管理に与える影響等を検討することが必要と考えられる」との見解を示した。
  46. ILO第181号条約において、民間職業紹介事業所による求職者本人からの手数料徴収については、原則として禁止している。
  47. 経団連は2025年2月、中部経済連合会とシンポジウム「外国人が活躍できる社会に向けて」を名古屋市内で共催。

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